治療する

卵巣がんの治療の流れと具体的な治療法を紹介します。

手術

卵巣がんの手術では、まず手術をして卵巣と卵管を摘出し、卵巣がんかどうかを確認します1)。検査の結果、悪性(卵巣がん)と診断された場合には、以下の手術を行います1)。また、腹水や腹腔内の組織を採取して、がんの拡がり具合を診断します1)。(開腹手術を行うことが標準的ですが、がんの拡がりを確認する検査[診断]のみを目的として腹腔鏡を使った手術が選択される場合もあります。)



ベースとなる手術

両側の卵巣と卵管の摘出、子宮の全摘出に加えて大網(だいもう)の切除を行います。大網とは胃のあたりから垂れ下がっている脂肪組織で、お腹の臓器をおおっています。卵巣がんの転移が最も起きやすい組織のため、切除して転移の有無を確認します。


両側の卵管・卵巣+子宮の全摘出


後腹膜リンパ節の摘出(郭清[かくせい])

卵巣の近くに位置する骨盤リンパ節と傍大動脈リンパ節(後腹膜リンパ節)を摘出します。
リンパ節にはがんが転移しやすいため、摘出したリンパ節について転移の有無を確認します。


後腹膜リンパ節の摘出(郭清[かくせい])


腫瘍減量術

手術を行ったとき、すでにお腹の中にがんが拡がっていることがあります。この場合、がんを完全に取り切れなくても、できるだけ多くのがんを取り除く腫瘍減量術を行います。手術後に残ったがんが小さいほど、その後の治療成績がよいことが分かっています。

がんの発症を予防
(リスクを低減) するための手術

BRCA1/2遺伝子変異を有する、遺伝性乳がん卵巣がん症候群の方に対して、卵巣がんの発症予防を目的とした リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)という手術があります3)。この手術では、卵巣がんを発症する前にあらかじめ卵管と卵巣を摘出することで、卵巣がんの発症リスクが低下し、かつ死亡リスクも低下することが示されています2)。なお、乳がんを既に発症したHBOCの患者さんについては、リスク低減卵管卵巣摘出術や反対側の乳房切除術は保険診療として行えるようになっています。

用語集

腹水
お腹の中に30~40mLの生理的体液を超えて貯まっている液体4)
腫瘍
身体を構成する細胞が、何らかの原因で異常に増殖する性質を獲得し、体内で増殖を続けて、身体を傷つける病態5)

監修:東京大学大学院医学系研究科 医用生体工学講座統合ゲノム学 教授 織田 克利 先生

  • 日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第2版, 金原出版, 東京, p156-159, 2016
  • 加藤 友康 監修:最新 子宮がん・卵巣がん治療 “納得して自分で決める”ための完全ガイド(「あなたが選ぶ治療法」シリーズ), 主婦と生活社, 東京, p92-93, 2018
  • 日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)編:遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2021年版, 金原出版, 東京, p22-32, 2021
  • 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p2438, 2009
  • 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p1289, 2009