向き合う

がんを告知された後の心の変化と、ご家族も含めた心のケアを紹介します。

がんを告知された後の心の変化

我慢せずに悲しみ、怒ってから現実と向き合う

初めて卵巣がんになったとき

がんを告知されたり再発を知らされたとき、人は今までの安全で穏やかな日々を失ったと感じ(=喪失体験)、直後は多くの人は何も考えられなくなったり、がんから目を背けたりします。「なぜ自分だけがこんな目に合うのか」と思い、悲しみ、怒りなどの感情に襲われます。

悲しみや怒りなどの負の感情は「よくないもの」と考えられがちですが、喪失体験をした時には押し込めようとしないほうが良いのです。
 
なぜなら、大切なものを失った場合、喪失を受け入れるには時間とさまざまなプロセスが必要だからです。直後の茫然自失となり起こったことがにわかには理解できない時期、取り乱して泣き叫んだり理不尽な現実に怒りがこみ上げたりする時期、失ったものに目を向けて涙が止まらない時期、人生とはそもそも平等ではないんだという現実を理解してしみじみ泣く時期など、さまざまな様相を呈しながら少しずつ向き合うようになるといわれています。これを心理学の領域では「喪の仕事(mourning work)」といいますが、こうした骨の折れるプロセスを経て、人はがんになる前に描いていた人生に徐々に別れを告げ、新たな現実に向けて歩み始めると考えられています。

「がんなど大したことじゃない」と自分に言い聞かせ、悲しみや怒りの感情にフタをして、平静を装って困難を乗り越えようとする方もいます。しかし、命にかかわる出来事の場合、つらい気持ちを押し込めて立ち向かうのは、かなり骨の折れる作業です。


がん体験後の2つの課題 がん体験後の2つの課題

自分は今、傷ついていて、悲しくて苦しいという事実を、まず自分自身が認めることから始めましょう。信頼している人に、傷ついている自分の気持ちをありのまま話すことができれば、気持ちの整理につながります。


喪失と向き合う時期の「うつ病」1)

強いストレスを受けたとき、多くの人が心に大きな衝撃を受け、悲しみや怒りなどの感情が生じるのは当然のことです。物事に向き合い、悲しんだり怒ったりすることは必要なことですが、大きなエネルギーを必要とします。

その結果、心がくたびれ果ててしまい、時間が経ってもいつも通りの生活を再開できないことがあります。以下のような症状のいくつかが2週間を超えて持続する場合は「うつ病」などの心の問題が生じている可能性があるため、専門的な心のケアを受ける必要があります。

うつ病の具体的な症状2)
  • 気分が落ち込む
  • 物事への興味、喜びが失われる
  • 集中力や思考力が低下する、
    決断をするのが難しくなる
  • 罪悪感や、
    自分には価値がないという思いを抱く
  • 死にたいという気持ちが繰り返される
  • 体重が著しく減る、または増える
  • 眠れない、または十分に寝ても眠い
  • 疲れやすい、または気力がない
  • 体がうまく動かない、
    またはじっとしていられない




病気になったことで気づくこと

再発したとき

がんを体験された方は、喪失と向き合うという課題に加え、多くの方が「病気になった人生をどう考えたらよいのか?」というもうひとつの課題に向き合われます。嵐のような悲しみや怒りは簡単にはやまないし、完全になくなることはないでしょうが、「この事実は変えられないんだ」という感覚がうまれたとき、この2つめの課題への取り組みが始まります。
その結果、以下の5つのうちのいずれかにあてはまるような考え方の変化が起きることがあります。

がん体験後の新たな世界観 ~5つの変化~ がん体験後の新たな世界観 ~5つの変化~

病気になったことを無理に前向きにとらえる必要はありませんし、悲しみや怒りの感情はいつまでもくすぶり続け、これからのことになかなか目が向かないという方もたくさんいらっしゃいます。今は元気な方も、そこに至る道のりは平たんでなかったとみなさんおっしゃいます。2つ目の課題への取り組みも、自分のペースで良いのです。





精神腫瘍医が解説するがんと心のケア

がん研究会有明病院 腫瘍精神科の清水 研先生が、がんと心のケアについて動画で解説します。

がん患者と家族の心を助ける精神腫瘍科についてと、がんになるということ、苦しみとの向き合い方について解説します。

がんと心のケア

がんになったことに伴う不安との向き合い方について解説します。

がんと心のケア

監修:がん研究会有明病院 腫瘍精神科 部長 清水 研 先生

  • 清水 研ほか 監修:国立がん研究センターのこころと苦痛の本, 小学館, 東京, p36-39, 2018
  • 清水 研ほか 監修:国立がん研究センターのこころと苦痛の本, 小学館, 東京, p58-63, 2018