卵巣は女性ホルモンを分泌しているため、閉経前にがんの手術で卵巣を取り除くと、女性ホルモンが急激に減少し、のぼせ・ほてりやイライラなど更年期障害のような症状を認めることがあります。よくみられる症状は以下のとおりですが、あらわれ方には個人差があります1)。
付き合う
卵巣がんになって患者さんが悩んだことと、そのケアを紹介します。
のぼせ・ほてりやイライラ
体の症状
- のぼせ、ほてり、発汗
- 頭が重い、頭が痛い
- 動悸
- 肩こり
- 腰痛
- 腟乾燥感
- 性交時の痛み
心の症状
- イライラ
- 不安
- 気分の落ち込み
- 不眠
- 意欲の低下
- だるい
- 疲労感
このような体や心の症状の多くは、時間とともに治まっていきます2)。
また、女性ホルモンが減少することで、腟の感染症や脂質異常症(心筋梗塞や脳梗塞の原因とされる)、骨粗しょう症(骨折しやすくなる)などの病気になりやすくなります。他にも、筋力が落ちたり、皮膚のしわが増えたりもします1)。
体や心の症状への対応
症状が軽い場合は、体調を整えるために栄養バランスを考えた食事をとる、ウォーキングのような軽い運動をするなど日常生活の工夫が効果的です。ストレス解消のために趣味を楽しむこともよいでしょう1)。
症状がつらく、日常生活に支障が出る場合は、漢方薬や女性ホルモンを補充する治療(ホルモン補充療法)がありますので、担当医にご相談ください。
このような体や心のつらさは、ひとりで抱え込まないことも大切です。家族や身近な人には、がんや体調のことを伝えて協力してもらいましょう。
なりやすい病気に注意する
定期検診の際に、脂質の状態や骨量をチェックすると、自覚症状が少ない脂質異常症や骨粗しょう症の有無を知ることができます3)。検査の頻度は、半年~1年に1回が良いとされますが3)、具体的には担当医にご相談ください。
女性ホルモンが減少することで生じる病気を予防するためには、日ごろからバランスのよい食事と適度な運動を心がけ、体調管理に気をつけてください。
用語集
- 閉経
- 更年期になり卵巣の活動性が徐々に低下してやがて消失し、月経が永久に停止すること4)
- 脂質異常症
- 血清中の脂質が異常に増加した状態5)
- 心筋梗塞
- 冠循環障害によって生じた、ある大きさ以上の限局的な心筋壊死6)
- 脳梗塞
- 脳血管の閉塞によって生じる病変7)
- 骨粗しょう症
- 骨の量(骨量)が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気8)
- 加藤 友康 監修:最新 子宮がん・卵巣がん治療 “納得して自分で決める”ための完全ガイド(「あなたが選ぶ治療法」シリーズ), 主婦と生活社, 東京, p126-127, 2018
- 藤原 恵一、廣田 彰男 監修:イラストでわかる 子宮がん・卵巣がん(手術後・退院後の安心シリーズ), 法研, 東京, p56-57, 2013
- 日本婦人科腫瘍学会 編:患者さんとご家族のための子宮頸がん・子宮体がん・卵巣がん治療ガイドライン 第3版, 金原出版, 東京, p209-212, 2023
- 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p2522, 2009
- 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p894, 2009
- 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p1386, 2009
- 伊藤 正男ほか 編:医学書院 医学大辞典 第2版, 医学書院, 東京, p2168, 2009
- 日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 骨粗鬆症 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/osteoporosis.html