先天性TTPの治療

先天性TTPの治療は、
どのようなものがあるの?
先天性TTPの治療についてご紹介します。

監修:奈良県立医科大学 
輸血部・血液内科 教授 松本雅則 先生

先天性TTPの治療

先天性血栓性血小板減少性紫斑病せんてんせいけっせんせいけっしょうばんげんしょうせいしはんびょう(TTP)の治療では、遺伝子の変異によってつくられない、または、はたらきが低下しているADAMTS13あだむてぃーえすじゅうさんを補うため、新鮮凍結血漿(FFP)を投与します。また、患者さんの状態によっては、定期的にFFPを投与することで、症状の出現を予防します1)

<投与方法2)

FFP 5~10 mL/kgを2~3週ごとに点滴によって投与します。
症状があらわれた時には、10 mL/kgを点滴によって投与して効果を確認します。

先天性TTP治療を受けている患者さんには、定期的にFFPの投与が必要な患者さんや、症状が強くなった時にだけFFP投与が必要な患者さんなど、さまざまな方がいらっしゃいます2)。FFPをどのように投与するのがよいかは、血小板数の増加や尿潜血の程度などをふまえて判断されます2)

FFPの投与により、発熱、じんま疹、血圧低下などのアレルギー症状や感染症があらわれる場合があります3)。また、FFPは点滴によって投与するため、通院が必要となります4)。また、投与するFFPの量によりますが、点滴に数時間かかります。

また、 現在までに日本国内での報告はありませんが、先天性TTP患者さんにFFPを投与することによってADAMTS13インヒビター※※が生じる場合があるため、定期的なインヒビター検査を行います2)

  • ADAMTS13:血小板をくっつける“のり”のような分子で血栓をつくるためにはたらくフォン・ヴィレブランド因子を切断して、必要のない血栓ができないようにする酵素(→フォン・ヴィレブランド因子とADAMTS13のはたらき
  • ※※
    インヒビター:ADAMTS13のはたらきを低下させる物質

FFPによる治療の実際(例)

FFPによる治療を受けるときは、患者さんやご家族に対して、医療スタッフがその必要性やリスクを説明します5)。患者さんの同意を得てから、必要な検査を行い、治療が行われます5)。FFPを投与した後には、その効果と副作用の有無が確認されます5)

FFP投与の流れ(例)5,6)

  • FFP投与についての説明と同意
    (インフォームド・コンセント)

    • 医療スタッフが患者さんに、FFP治療について説明して患者さんから治療をする同意を得ます。

    説明すること

    • 治療の必要性や有効性
    • 使用する輸血用血液製剤の種類や量
    • 副作用などのリスクについて

    など

  • FFP投与前の検査

    • FFPを投与する前に、ABO血液型検査などの患者さんの血液と使用する輸血用血液製剤の「適合性を確かめる検査」と、患者さんの「感染症に関する検査」を行います。
  • FFP投与の実施

    • 医療スタッフがFFPに異常がないかを確認し、複数のスタッフでその製剤が患者さんのために準備されたものであるか、繰り返し確認します。
    • 投与前には体温・血圧・脈拍、可能であればSpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)を測定します。
    • FFPは、患者さんの様子に注意しながら、成人の場合、投与開始から最初の10~15分間は1分間に1mL程度の速さで投与されます。その後は1分間に5mL程度の速さで投与されます。
    • 副作用の早期発見・治療のため、投与を始める前と開始してから5分間、15分後に、医療スタッフが患者さんの状態を確認します。
  • FFP投与の効果と副作用の確認

    • 副作用の早期発見・治療のため、投与が終了した後に、医療スタッフが患者さんの状態を確認し、継続して観察を続けます。
    • 通常、投与当日または翌日に採血し、投与の効果が得られているかを確認します。

参考文献