暮らしのヒント

ナルコレプシーは、治療によって症状を改善することで通常に近い社会生活を送ることができる病気です。
ここでは、ナルコレプシーの特徴を踏まえ、患者さんが安心して暮らすために生活の中でできる工夫やヒントを紹介します。

ヒント① 適度な仮眠で日中の眠気をコントロールしましょう1,2)

ナルコレプシーは、1日に何度も睡眠の発作が起こる病気です。
夜間に十分な睡眠がとれていない場合は、良質な睡眠がとれるよう努めましょう。夜は早めに床につき、規則正しい生活を送るよう心がけることが大切です。

ただ、努力や意志だけでは、日中に突然襲ってくる強い眠気の発作を抑えることは困難です。夜間に十分な睡眠をとったり、生活リズムを改善しても収まらない眠気に対しては、昼休みなどに短時間でも目をつむって仮眠をとることが効果的です。寝てはいけない場面で突然寝てしまわないように、2~3時間おきに5~20分程度の仮眠をとるなど、自分に合った方法で上手に眠気をコントロールしましょう。

ヒント② 情動脱力発作が起こりやすい場所・状況を避ける工夫をしましょう3,4)

情動脱力発作は、ナルコレプシータイプ1には特徴的な症状の一つで、喜怒哀楽の感情が強く動いたときに首、全身、ひざ、腰、ほほ、あご、まぶた、などの姿勢筋の力が急に抜ける症状です。

情動脱力発作がどんなときに現れるか、前兆の有無、頻度や症状は患者さんによって異なります。まずは自分の症状を知り、笑ったときや嬉しいとき、泣いたときや悲しいとき、ある特定の場所や状況で起こる場合は、強い感情が高まるのを意識的に避ける、発作の予兆を感じた際は座ったり横になるなど、自分に合った方法で情動脱力発作をコントロールできるよう工夫してみましょう。

ヒント③ 一人で病気に立ち向かわず周囲に理解・協力を求めましょう1,2,5-8)

ナルコレプシーは、社会ではあまり認知されておらず、「怠け者」のレッテルを貼られてしまうことも多い病気です。居眠りに対する周囲からの誤解や偏見に悩み、孤独を感じることもあるかもしれません。

しかし、一人で病気に立ち向かう必要はありません。周囲に自分のことをオープンに話して、協力を求めてみませんか。学校であれば「休み時間が終わったら起こしてほしい」、会社であれば「向いている業務内容へ変更してほしい」、「休憩時間の仮眠について配慮してほしい」など、まずは信頼できる友人、上司や同僚など心許せる人に相談してみましょう。

また、令和6年4月からは事業者による「合理的配慮の提供」が義務化されました。
「合理的配慮」とは、障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」という意思が示された場合には、負担が重すぎない範囲で対応することが求められるものです。ナルコレプシーもこの合理的配慮の提供の対象となる病気の一つです。社会的バリアを取り除くために負担が重すぎない範囲でできる対応について、事業者と建設的な対話を重ね、解決策を探していくことが重要です。

合理的配慮についてどこに相談すればよいのかわからないという人も、政府が設置している専用の相談窓口「つなぐ窓口」で相談することができます。

もし今あなたが就職活動中なのであれば、「仮眠をとることができる」、「上司や同僚に相談できる」など病気に対して合理的配慮がある職場を探すことも大切です。合理的配慮がある職場を見つけるのが難しいと感じたら、障害のある人の仕事・生活を支援する公的機関「障害者就業・生活支援センター」を頼ってみるのもひとつの手段です。

ヒント④ ナルコレプシー患者さんでも、治療と服薬で眠気をコントロールできれば運転免許を申請できます1-3,9)

ナルコレプシーと診断されても、治療を受け、決められた服薬をすることによって、眠気がコントロールできていると認められれば、運転免許証が交付され、車を運転することが可能です。運転免許を申請する際には、必ず本人が症状を申告してください。

晴れて免許を取得しても、運転に際しては細心の注意を払いましょう。服薬していないとき、睡眠不足のときは、絶対に運転しないでください。

長時間にわたる車の運転が必要な職場環境も避けたほうがよいでしょう。
運転に不安がある場合は、都道府県警察に設置されている安全運転相談窓口(安全運転相談ダイヤル:♯8080)で相談することができます。

ヒント⑤ 孤独を感じたときは、患者会に参加してお互いの体験を共有してみましょう5,10)

居眠りによる罪悪感、劣等感や挫折感により、孤独を感じていませんか。
ナルコレプシー患者さんが運営する「なるこ会」は、ナルコレプシーおよび関連過眠症患者さんとその家族などに対して、より治療が受けやすく、患者さんが安心して生活できる社会づくりをすすめ、医療の発展に寄与することを目的として活動しています。

会員になることで、会員同士の交流会や親睦会へ参加することができます。他のナルコレプシー患者さんが日常生活で困難に直面したときにどう対処しているのか、どのように病気や治療に向き合っているのかなど、お互いの体験を共有することで、悩んでいるのが自分一人ではないことを実感できるはずです。
「なるこ会」の詳細は以下をご覧ください。

【出典】

  1. 本多裕:ナルコレプシーの研究 知られざる睡眠障害の謎, 悠飛社, 2002
  2. 川崎俊:ナルコレプシーと生きるー向き合い方から在り方へー, 幻冬舎メディアコンサルティング, 2021
  3. 日本ナルコレプシー協会:ナルコレプシーQ&A https://narukokai.or.jp/qa.html
  4. Hlodak J, et al. Sleep Breath. 2025; 29(4): 231
  5. 本多真. 精神科治療学. 2023; 38(6): 611-666
  6. 日本ナルコレプシー協会:ナルコレプシーはこんな病気 https://narukokai.or.jp/about_nalco.html
  7. あしたの暮らしをわかりやすく 政府広報オンライン:事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化 https://www.gov-online.go.jp/article/202402/entry-5611.html
  8. 厚生労働省:障害者就業・生活支援センターの概要 https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001242593.pdf
  9. 警察庁:安全運転相談窓口について https://www.npa.go.jp/policies/application/license_renewal/conferennce_out_line.html
  10. 日本ナルコレプシー協会:なるこ会について https://narukokai.or.jp/about_narukokai.html