アクティブに毎日を楽しむことは、とても素晴らしいことです。けれど、「新型コロナウイルス感染症はもう終わったんでしょ」「私は大丈夫」と油断していませんか?
実際には、新型コロナウイルス感染症のリスクは今も消えたわけではありません。また、体力に自信がある方でも、高齢であればそのこと自体が重症化のリスクなのです(図)1)。
ここでは、アクティブに過ごすあなたのために、TPO(時と場所、場面)に応じた対策のポイントをご紹介します。ぜひ日々の行動に取り入れてみてください。

図
年齢階層別にみた新型コロナウイルス感染症重症化のリスク
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※「重症化率」は、新型コロナウイルス感染症と診断された症例(無症状を含む)のうち、集中治療室での治療や人工呼吸器等による治療を行った症例または死亡した症例の割合。
地域活動や
習い事などでは……
ボランティア活動や地域の集まり、趣味の習い事やスポーツジムは、心身の健康を保つうえでとても大切です。
ただし、体調がすぐれない日は無理をせず休むことが大切。「行かないと迷惑になる」「待っていてくれるのに休むのは悪い」と思って頑張り過ぎてしまうと、自分がつらいだけでなく、結果的に周囲に迷惑をかけてしまうことにもなりかねません。
新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経た今、「体調が悪ければ休む」は、当然のことになりました。「休む勇気」も健康を守る大事な習慣です。
また、習い事やスポーツジムなどで器具を共用する際は、使用前後に消毒を行うのが、みんなが安心して気持ちよく利用するためのルール。施設に消毒用品がない場合に備えて、携帯用の消毒グッズを用意しておくと安心です。
さらに、室内ではこまめに換気を心がけ、特に新型コロナウイルス感染症が流行しているというニュースが報じられているときや、換気が悪いところに多くの人が集まる場では可能な範囲でマスクを着用しましょう。
消毒グッズの購入と安全のポイント2)
- 消毒剤は医薬品または医薬部外品を選ぶ
- アルコール消毒液は濃度60%以上のものを選ぶ
- 高濃度アルコールはキッチンなど火の気のあるところでの使用NG
- 消毒剤は空間に噴霧しない
- 消毒剤はマスクに噴霧しない

公共交通機関での移動中や
旅行中は……
新型コロナウイルス感染症への対策で忘れてはならないのは「症状がなくても感染していて、他の人にうつす場合がある」ということです。これは周囲の人に限らず、あなた自身にも当てはまります。
電車やバスなど公共交通機関を利用するときは、人との距離をできるだけ保ち、咳エチケットを守りましょう。それだけで、お互いに安心感が高まります。
また、以前から予定していたことであっても、体調がすぐれないときは思い切って予定を変更できるようにしておくことも大切です。
さらに、長距離の移動や宿泊を伴う旅行では、「旅エチケット」3)を意識して行動しましょう。
「思い切って海外旅行に!」というときは、FORTH(厚生労働省検疫所)や外務省海外安全情報などの公式情報で目的地の感染症情報を調べ、渡航前にかかりつけ医やトラベルクリニックで相談すると安心です。
食事会や行事は……
親しい人との食事会や冠婚葬祭などの行事では、つい会話が弾んでしまうものです。ただ、着席での会食は他の人と近しい距離で長時間過ごすことになるので、特に新型コロナウイルス感染症が流行しているというニュースが報じられているときや、換気が悪いところに多くの人で集まるときは、可能な範囲でマスクを着用しましょう。また、席の移動や箸・コップの使いまわしは控えることが大切です4)。
さらに、体調不良の際には直前でも遠慮なくキャンセルできるよう、事前に申し合わせておくと安心です。これは自分のためだけでなく、参加者みんなを守ることにつながります。
もし、あなたが幹事を務めるなら、換気しやすくスペースをゆったりと取れる会場を選び、あまり長時間にならないよう工夫しましょう4)。短い時間でも充実したひとときを過ごせれば、それが良い思い出となり、大切な人たちとのつながりを長く守ることにもなります。
食事会や行事で感染リスクを下げる工夫4)
- 飲酒は、少人数・短時間、普段あっている人と、適量で
- 箸やコップは使い回わさず
- 席は斜め向かいに
- 体調が悪ければ参加しない

スポーツ観戦や
イベントでは……
スポーツ観戦やライブなどの人が集まるイベントでは、マスク着用を忘れずに。気分が盛り上がり、つい声を出して応援したくなるときも、声量を控えるか、拍手でエールを送りましょう5)。感染対策と会場の一体感、その両立を意識してみましょう。
また、会場や施設に入場する際の検温や手指消毒には、積極的に協力してください5)。一人ひとりの配慮が、安心して楽しめる場づくりにつながります。
スポーツ観戦やライブでの注意点5)
- 体調が悪い時は参加を見合わせる
- マスク着用
- こまめな手洗い、消毒
- 他の参加者との適度な距離を保つ
- 控えめな声量、または拍手で応援

アクティブに過ごし、エネルギーに満ちた生活を送ることは、それ自体が体力づくりの一環であり、感染症を跳ねのけるあなたのパワーの源にもなっていることでしょう。
ただ、たとえ元気でも、高齢になるにつれて新型コロナウイルス感染症のリスクが高まるのも事実です。
地域の集まり、親しい人との食事会、趣味、旅行――。さまざまな楽しみを、これからも安心して続けていくために、少しの工夫を続けましょう。「手洗い」「うがい」「マスク」の基本に加え、TPOにあわせてマスクや消毒グッズを使い、会場や旅先を選ぶときには感染予防も頭の片隅に入れておく。そんな習慣が、自分自身と、一緒に過ごす大切な人を守ることにつながります。
国際医療福祉大学医学部感染症学講座 代表教授
国際医療福祉大学成田病院感染制御部 部長
松本 哲哉 先生

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