武田薬品工業株式会社

用語集

ゴーシェ病に関連する用語について解説しています。

あ行

●アンジオテンシン変換酵素(ACE:Angiotensin-Converting Enzyme)
アンジオテンシンⅠという物質を、アンジオテンシンⅡに変える酵素です。アンジオテンシンIIには血圧を上げる働きがあります。ゴーシェ病では血液中のアンジオテンシン変換酵素が増えることが知られています。
●遺伝子治療
遺伝子の変化が原因で起こる病気を治療するために、体の外から患者さんの体内へ、正常な遺伝子を入れて治療する方法です。研究が盛んに行われていますが、ライソゾーム病では実用化にはまだ至っていません。
●胃瘻(いろう)
胃の壁に穴を開け、胃瘻(いろう)カテーテルと呼ばれる細い管などを挿入、固定する処置のことです。直接胃の中に栄養液などを注入することができるため、口から食べ物を摂取できない方や食べてもむせこんで肺炎などを起こしやすい方などに行われます。
●壊死
体の組織や細胞の一部が死ぬこと、また組織や細胞が死んだ状態のことです。
●X連鎖遺伝
X連鎖とは変異遺伝子がX染色体上にあるものを言います。女性はXを2本、男性はXとYを持ちます。男性がX染色体に変異遺伝子をもつ場合、症状を示します。女性では症状を示さない場合(保因者)と示す場合があります。
●エルレンマイヤーフラスコ変形または三角状フラスコ変形
X線画像で大腿骨の先端がエルレンマイヤーフラスコ(三角フラスコ)のように変形して見えることから、こう名づけられました。ゴーシェ病の患者さんに認められる骨の変形の一つです。

か行

●眼球運動障害
脳の障害により目の動きに異常が生じることです。ゴーシェ病では斜視、眼球運動失行(がんきゅううんどうしっこう)(眼球を思う方向に素早く動かすことが出来ない状態で、頭を動かして視線を合わせようとする)などが認められます。
●肝臓
お腹の右上にある臓器です。体の中の環境を維持するために、必要な物質の合成、不要な物質の分解などさまざまな働きをしています。糖、脂質、タンパク質の代謝にも関与しています。
●肝脾腫(かんぴしゅ)
肝臓や、脾臓(ひぞう)が大きくなることです。ゴーシェ病では、肝臓や脾臓の細胞にグルコセレブロシドが過剰にたまるため肝脾腫が見られます。
●気管切開
前頸部(ぜんけいぶ)(のど仏の下あたり)に穴を開け、気管カニューレと呼ばれる管を挿入して気道を確保することです。長期間にわたって人工呼吸管理が必要な場合や、痰や分泌物がうまく吐き出せず、窒息しやすい場合などに行われます。
●基質
酵素が作用する物質のことです。基質は酵素の働きにより、分解されたり、他の物質へ変化したりします。
●基質合成抑制療法
基質をつくり出す酵素の働きを抑えることで病気を治療する方法です。分解できずに過剰にたまった基質は体に悪影響を及ぼすため、新たな基質がつくられることを抑える治療法です。
●グルコセレブロシダーゼ
グルコセレブロシドをセラミド(脂質)とグルコース(糖)に分解する酵素です。ライソゾーム内で働いています。ゴーシェ病ではこの酵素が欠損することで症状がひきおこされます。
●グルコセレブロシド
セラミド(脂質)とグルコース(糖)からつくられる糖脂質の1種です。
●痙攣(けいれん)
何らかの原因で神経細胞が興奮し、筋肉が激しく収縮することです。体の一部で起こる場合もあれば、全身の筋肉が痙攣(けいれん)する場合もあります。
●血液脳関門
脳に栄養や酸素を送る血管にある関門で、脳への物質の移動を制限する仕組みです。血液中の有害物質が脳に運ばれるのを防ぎます。
●血小板
血液に含まれる成分の1つです。血管が破れた時に、血液を固めて血管をふさぐ働きがあるため、血小板が減少すると血が止まりにくくなります。
●顕性遺伝
父親と母親から受け継いだ一対の遺伝子のいずれか片方に変異があると症状が現れる遺伝形式です。
●酵素補充療法(ERT:Enzyme Replacement Therapy)
足りない酵素を、静脈から点滴して補充する治療法です。英語のEnzyme Replacement Therapyの頭文字をとってERTと呼ばれます。
●ゴーシェ細胞
グルコセレブロシダーゼの不足または働きが弱まっているためグルコセレブロシドがたまった細胞のことです。体内の異物を取り込んで消化するマクロファージにグルコセレブロシドが蓄積した細胞をゴーシェ細胞と呼びます。ゴーシェ病の診断に用いられます。
●股関節(こかんせつ)
太ももの付け根の部分にあり、体を支えるだけでなく、立つ、歩く、座る、昇る、降りる、飛ぶ、蹴る、などといった下半身を動かすときにも重要な働きをします。
●骨壊死(こつえし)
骨の組織が死んでしまうことです。骨は生きた細胞でできているので、骨への血液供給が不足すると骨の細胞が死滅してしまいます。骨壊死の結果、骨折しやすくなり痛みが強くなります。
●骨クリーゼ
急激に骨の痛みが悪化する現象です。発熱などの症状があらわれます。患部の腫れや熱感がみられる場合もあります。
●骨髄
骨の中にある組織です。血液の成分である赤血球、白血球、血小板をつくる工場として働いています。
●骨髄移植
骨髄に異常が生じたときに、健康な人から正常な骨髄細胞を移植する治療法です。白血病や再生不良性貧血の治療として行われていますが、ゴーシェ病の治療として行われることもあります。ゴーシェ病では移植された骨髄由来の細胞が、不足している酵素を補います。
●骨髄炎
骨に細菌が入り、骨髄が炎症を起こす病気です。抗生物質を用いて治療しますが、手術が必要になることもあります。
●骨粗鬆症(こつそしょうしょう)
骨の量(骨量)が減少し、骨の構造が脆くなることによって骨が折れやすくなる病気です。老化や遺伝的な体質、女性では閉経後のホルモンバランスの変化などによって生じやすくなります。
●骨痛
骨が痛いと感じることです。ずきずきした痛み(疼痛(とうつう))、皮膚の上から押したときの痛み(圧痛)を感じます。骨が折れていなくても、骨内部の圧が高まったり、骨皮質が圧迫されたりすることで感覚神経が刺激され、痛みを感じます。
●骨量減少
骨全体に含まれるミネラル、すなわちカルシウム(骨塩)が減少することです。骨を壊す骨吸収と骨を作る骨形成のバランスが崩れると、骨量(骨塩量)が減少します。加齢に伴っても骨量は除々に減少しますが、ゴーシェ病でも骨量減少が起こりやすいことが知られています。

さ行

●酸性フォスファターゼ
リン酸化合物を分解する働きをもち、酸性の環境で活発に働きます。ライソゾームに含まれる加水分解酵素であり、ゴーシェ病では血液中の酸性フォスファターゼが増えることが知られています。
●斜視
物を見る時に、片方の目は正面を向いていても、もう一方の目が違う方向を向いている状態です。原因としては、目を動かす筋肉や神経の異常によるものや遠視によるものなどがあります。
●常染色体潜性遺伝
常染色体に存在する一対の遺伝子において、母親由来の遺伝子と、父親由来の遺伝子の両方に変異があるときに症状がみられる遺伝形式です。
●潜性遺伝
父親と母親から受け継いだ一対の遺伝子の両方に変異がある場合のみ症状が現れる遺伝形式です。

た行

●対光反射
網膜に光が当たると瞳孔が小さくなる反応のことです。光が片方の目に当たると対光反射は両目に認められます。脳の神経や視神経が障害されると、反射は起こらなくなります。
●大腿骨(だいたいこつ)
股から膝の間にある骨です。体の中で一番大きな骨で、上部は股関節によって骨盤と、下部は膝関節(しつかんせつ)によって脛骨(けいこつ)とつながっています。
●大腿骨頭壊死症(だいたいこっとうえししょう)
大腿骨の上端にある大腿骨頭の一部が、血流の低下により壊死(えし)(骨に血が通わなくなって骨組織が死んだ状態)に陥った状態です。骨壊死(こつえし)になった部分が潰れることにより、痛みが出現します。
●てんかん
脳の神経が異常に興奮し制御がきかなくなることで、発作を繰り返す慢性の病気です。突然意識を失って反応がなくなる意識障害、全身を硬直させる強直(きょうちょく)発作、痙攣(けいれん)などの発作が繰り返し起こります。

な行

は行

●脾臓(ひぞう)
お腹の左上、肋骨の下あたりにある臓器です。老化した赤血球を壊したり、血液を蓄えたりする働きがあります。何らかの原因で脾臓が大きくなった状態は脾腫(ひしゅ)と呼ばれます。
●貧血
血液の成分である赤血球中に含まれるヘモグロビン濃度が正常値以下に減少した状態のことです。ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を担っているため、貧血になると全身で酸素不足に陥り、動悸、息切れ、頭痛、耳鳴り、疲労感、皮膚の蒼白(そうはく)などの症状があらわれます。
●保因者(ほいんしゃ)
潜性遺伝する一対の遺伝子のうちの1つに変異を持っていますが、もう一方の遺伝子には変異がないため、病気が発症しない人のことです。保因者のことを「キャリア」と呼ぶこともあります。

ま行

●マクロファージ
体内の異物を取り込んで、消化する細胞です。細菌や死んだ細胞の断片などの不要な物質を取り込んで分解し、細胞外へ排出します。貪食細胞とも呼ばれます。

や行

ら行

●ライソゾーム
細胞小器官のひとつで、細菌などの異物や老朽化した自身の細胞成分などを消化・分解するための場所です。物質を分解するのに必要な酵素(加水分解酵素)がたくさん含まれています。「リソソーム」、「ライソソーム」と呼ばれることもあります。

わ行

監修:熊本大学大学院生命科学研究部 小児科学分野 中村 公俊先生
監修:鳥取大学医学部 脳神経小児科 成田 綾先生

文献
酵素など生化学系の用語:清水孝雄 監訳. イラストレイテッド ハーパー・生化学原書30版. 丸善出版. 2016.
遺伝関係の用語:Lodish H 他.分子細胞生物学 第9版. 東京化学同人. 2023.
その他:南山堂医学大辞典 第20版. 南山堂. 2015.
医学書院医学大辞典 第2版.医学書院. 2009.
衞藤義勝, 井田博幸 編. ゴーシェ病UpDate. 診断と治療社. 2016.
厚生労働省. e-ヘルスネット(https://kennet.mhlw.go.jp/home)(2026年8月)
日本先天代謝異常学会 編. ゴーシェ病診療ガイドライン2021. 診断と治療社. 2021.

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