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ゴーシェ病はライソゾーム病?

監修:東京慈恵会医科大学 井田 博幸 先生

ライソゾーム病は細胞内に過剰に物質がたまる病気

細胞内には膜で区切られた小部屋がいくつもあります。不要になった物質を分解する小部屋をライソゾームと言います。ライソゾームではさまざまな酵素が働いていますが、それらの酵素の働きが悪いと、本来酵素で分解される物質が細胞内に過剰にたまり、細胞の働きを障害します。それがライソゾーム病です。

ライソゾーム病の種類は30種類以上1)

ライソゾーム病は、酵素の数だけ存在し、現在、約30種類が知られています。ゴーシェ病、ファブリー病、ポンペ病、ムコ多糖症などがよく知られています。

ライソゾーム病の種類 主な症状 細胞内にたまる物質 働きが悪い酵素
ゴーシェ病 肝臓や脾臓が腫れて大きくなる
貧血になる
血が止まりにくい
骨が痛む
けいれん
グルコセレブロシド
(グルコシルセラミド)
グルコセレブロシダーゼ
ファブリー病 手足の痛み
汗が出にくい
発疹(血管腫)
セラミドトリヘキソシド
(グロボトリアオシルセラミド)
αガラクトシダーゼ
ポンペ病 首がすわらない
筋力が弱い
グリコーゲン 酸性αグルコシダーゼ
ムコ多糖症I型 関節のこわばり
骨の変形
発達の遅れ
ヘパラン硫酸
デルマタン硫酸
α-L-イズロニダーゼ
ムコ多糖症II型 関節のこわばり
骨の変形
発達の遅れ
ヘパラン硫酸
デルマタン硫酸
イズロン酸-2-スルファターゼ
ムコ多糖症III
(A、B、C、D)型
発達の遅れ
多動
攻撃的な性格
ヘパラン硫酸 A型:ヘパラン-N-スルファターゼ
B型:α-N-アセチルグルコサミニダーゼ
C型:アセチルCoAα-グルコサミニド-N-アセチルトランスフェラーゼ
D型:N-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼ
ムコ多糖症IV (A、B)型 関節のこわばり
骨の変形
ケラタン硫酸 A型:N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼ
B型:βガラクトシダーゼ
ムコ多糖症VI型 関節のこわばり
骨の変形
デルマタン硫酸 N-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼ
ムコ多糖症VII型 関節のこわばり
骨の変形
ヘパラン硫酸
デルマタン硫酸
コンドロイチン硫酸
β-グルクロニダーゼ

厚生労働省難治性疾患等政策研究事業 ライソゾーム病(ファブリー病を含む)に関する調査研究班ホームページ より作表

ライソゾーム病の原因は「遺伝子の変異」

細胞内で、酵素の働きが悪くなるのは、遺伝子の変異が原因です。「遺伝子」はヒトをつくる様々なものの「設計図」にたとえられます。酵素に関する設計図が、なんらかの原因で変異をおこすと、酵素が正常な働きを失ったり、酵素自体が作られなくなったりします。

親から子へ遺伝子の変異が伝わる

遺伝子は染色体という入れ物に収められており、染色体には常染色体と性染色体があります。常染色体は22種類あり、1〜22まで番号がついています。一方、性染色体は2種類あり、番号ではなく、X染色体とY染色体と呼ばれます。常染色体は男女ともに同じものを2本ずつ(22種類×2本)、全部で44本あり、性染色体は、女性はX染色体を2本、男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持っています。合計すると、遺伝子(設計図)の入った染色体の数は、常染色体44本と性染色体2本(女性はXX、男性はXY)の46本になります。

親から子へ遺伝子の変異が伝わる

東京女子医科大学 附属遺伝子医療センター 遺伝子についてサイトより作図

子は父親と母親から23種類の染色体をそれぞれ1本ずつ受け取り、染色体の数は親と同じ46本になります。この時、父親からX染色体を受け取るとその子は女性に、Y染色体を受け取るとその子は男性になります。

親から子へ遺伝子の変異が伝わる

東京女子医科大学 附属遺伝子医療センター 遺伝子についてサイトより作図

子は親から染色体に入った遺伝子を受け取ることで、親から子に、ヒトとしての特徴が受け継がれますし、遺伝子の変異も、親から子に受け継がれることになります。

遺伝子に変異があっても病気になる場合とならない場合がある

遺伝子(設計図)には優性遺伝するものと、劣性遺伝するものがあります。常染色体の2セットある遺伝子のどちらかに変異があると病気になるのが「優性遺伝」、常染色体の2セットある遺伝子の両方に変異がないと病気にならないのが「劣性遺伝」です。したがって、劣性遺伝では片方のみの遺伝子に変異があるのみでは、病気にはなりません。このような遺伝子の状態の方を保因者と呼びます。
 性染色体のX染色体に変異がある場合、男性では性染色体はXYですので、X染色体の遺伝子に変異があると、必ず病気になってしまいます。これに対し女性では性染色体はXXですので、変異がないX染色体により機能が補填されるため病気にはなりません(ファブリー病を除く)。

 ライソゾーム病には、常染色体劣性遺伝とX連鎖劣性遺伝の場合があります。遺伝形式は病気によってそれぞれ異なります。

※常染色体劣性遺伝の疾患:ゴーシェ病、ポンペ病、ムコ多糖症(Ⅱ型を除く)
※X連鎖劣性遺伝の疾患:ファブリー病*、ムコ多糖症Ⅱ型

*ファブリー病の遺伝形式はX連鎖劣性遺伝ですが、保因者であっても症状が現れた女性が多数報告されています2)。このような例を症候性ヘテロ接合体と呼びます。

難病に指定され医療費の補助が受けられる

 ライソゾーム病は非常にまれな病気で、その発症頻度は新生児7,700人に1人と言われています3)。治療が難しく、費用は高額であるため、指定難病、かつ小児慢性特定疾患に指定されており、国や地方自治体から医療費の補助(医療助成制度)が受けられます。
※ゴーシェ病は、33万人に1人の割合と言われています4)

文献
  • 1.難病情報センター https://www.nanbyou.or.jp/entry/4063(2021年4月現在)
  • 2.Kobayashi M, et al. J Inherit Metab Dis. 2008.
  • 3.Konstantin Mechler et.al. Orphanet J Rare Dis. 2015; 10:46
  • 4.Owada MY, et al. Journal of the Japan Pediatric Society. 2000; 104: 717-722