発達障害ってなんだろう

併発する神経発達症群併発する神経発達症群

神経発達症のある子どもは2つ以上の特性を併せ持っていることが少なくありません。そのような場合は、複数の神経発達症の特性への配慮・支援が必要になってきます。例えば、ADHDにASDやLD/SLDを併せ持つ場合などがあります。それぞれの障害を併せ持った場合にどのような状態になるのか、少し詳しくみてみましょう。

ASDを併せ持つ場合

ASD(自閉スペクトラム症)とは?

自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害など似た症状を持つ一連の疾患をASDと呼ぶようになりました。「人との関わりやコミュニケーションが苦手」「興味のかたより、こだわりが強い」「感覚のかたより、動きがぎこちない」といった特性がみられます。「自閉」という表現から、「引きこもり」「心を閉ざしてしまう病気」といった間違ったイメージを持たれてしまうことがありますが、心理的なものではなく、幼少期から認められる脳の機能のかたよりにより、人間関係を形成することや状況理解に困難が生じる状態のことです。

ADHDの診断を受けた子どもにASDの特性が併存することや、ASDの診断を受けた子どもにADHDの特性が併存することもあります。両者の特性を併せ持っているとき、日常生活の困難が増すことが知られています。
両者を併せ持っているとき、ある行動上の問題がADHDの特性に由来しているのか、ASDの特性に由来しているのかを知ることは、適切な対応を行う上で大切です。
しかし、その区別は非常に難しいとされています。

LD/SLDを併せ持つ場合

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)とは?

全般的な知的水準は低くないのに、「読み」「書き」「計算」「数学的な推論」などの学習スキルのうち、特定のものの習得や習熟が著しく困難な状態をいい、そうした学習スキルに対応する脳の働きの問題と関連すると考えられています。
学習が始まる小学校以降に気づかれやすいといわれており、知的能力障害とは違って得意な分野ではよい成績を取る子も多いため、「頑張りが足りない」「もっと努力しないと」などと思われがちです。

「学習面の困難」とその対応例を、ADHDとLD/SLDそれぞれの視点でみてみましょう。

【ADHDの特性による学習面の困難】
  • 気が散りやすいために、理解能力があっても授業の内容が頭に入らず、勉強についていけない。
  • 集中力が続かないために、なかなか課題に取り組むことができない。

など

【対応例】
  • 刺激になるものを取り除き、静かな集中しやすい環境をつくる。
  • 課題は、集中できる分量に小分けにして取り組ませる。

など

【LD/SLDの特性による学習面の困難】
  • 「読み・書き」に困難があり、教科書や設問を読めなかったり、理解したり書くのに時間がかかったりする。
  • 「聞く・話す」に困難があり、授業内容を正確に聞き取れなかったり、先生に質問できなかったりする。

など

【対応例】
  • 読むのに困難があれば、文節ごとに区切って読むなど練習方法を提案する。
  • 書くのが苦手であれば、マス目の大きなノートの利用を促す。
  • 板書の書き写しの負担を減らし、授業のポイントをまとめたプリントを渡す。
  • 一対一で質疑応答の時間を設ける。

など

この図の例で示されるように、ADHDとLD/SLDでは学習面での困難への対応が異なります。
ADHDの特性への対応だけでうまくいかない場合、LD/SLDの視点からのアプローチを行うなどの工夫が必要になります。

<参考>:ADHDと症状が似ている疾患(愛着形成の問題)

神経発達症(発達障害)ではありませんが、症状が似ていることからADHDと並べて語られることの多い愛着形成の問題についても説明をしておきます。
愛着障害は極端な警戒心や過度のなれなれしさなどの対人行動の問題、多動や攻撃性などが特性です。ADHDと似ている特性がみられることがあるため、誤解されてしまうこともあります。愛着障害は全く世話をされないで育ってきた状況(ネグレクト)や頻回に養育者が交替するなどの状況で生じるものです。
ADHDと愛着障害とでは対処の方法が異なるため区別が必要です。ADHDの場合は、その特性を理解した関わりを重要視し、その子の感じている困難を軽減できるようにと考えます。愛着の問題が考えられる場合は、子どもだけでなく、保護者もケアし、安定した養育環境を保障しながら徐々に症状が治まっていくことを期待します。また、ネグレクトや虐待が疑われた際には児童相談所などに相談することも選択肢の一つです。

監修

  • 前多小児科クリニック 院長 前多 治雄 先生
このページのトップへ

知って向き合うADHDはadhd-info.jpから本サイトへURLが変更になりました。

本サイトのご利用に関しましては、必ず利用規約をご確認ください。本サイトを引き続き閲覧いただく場合、利用規約に同意したものとみなさせていただきます。