武田薬品工業株式会社

武田薬品工業株式会社

8.治療後の生活は
(再発・再燃について)

薬物療法がひと通り終わって病状が安定したら、元通りの生活を続けながら、定期的に検査を受けることになります。生活面でどのような点に注意したらよいのかも確認しておきましょう。多発性骨髄腫は再発・再燃することが多い病気ですが、再発・再燃に対する治療も進歩しつつあります。

治療後、病状が安定している間の定期検査

治療によって骨髄腫細胞やM蛋白が消失し、貧血や骨病変などの臓器障害の進行が認められない状態になったら、一般的には、定期的な検査を受けながら経過をみます(表12)。病院にもよりますが、病状が安定している間は4~6週間ごとに受診し、血液検査と尿検査でM蛋白の量、腎臓や肝臓の機能、造血機能などをチェックします。骨髄穿刺、骨のレントゲン検査、MRI(磁気共鳴画像)検査やCT検査は必要時に実施します。ただし、骨の痛み、発熱などの症状やいつもと違う症状が出たときには、次の定期検査を待たずに、すぐに受診しましょう。
ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体製剤の投与を受けている場合には、口腔ケアもかねて、定期的に歯科医の診察を受けてください。

表12 治療後に定期的に行われる主な検査

表12 治療後に定期的に行われる主な検査 画像を拡大する

日常生活の注意点

多発性骨髄腫の患者さんは、治療後も感染症になりやすく、骨がもろくなっている場合があります。感染症の予防を心がけ、骨にあまり負担をかけ過ぎにないようにしましょう。ただ、まったく運動をせずに安静を続けていると、筋力が落ち、骨もさらにもろくなってしまいます。ウォーキングなどで、無理をしない程度に体を動かしましょう。どの程度の運動をしてよいかを医師に確認しておくことも大切です。
また、腎臓への負担を軽減するため脱水にならないように水分を多めにとりましょう。

再発・再燃とは

治療によって減少し活動性が低くなった骨髄腫細胞、M蛋白が再び出現することです。国際的な基準では「M蛋白再発」と「臨床的再発」という段階があります。一般的には、この基準を用いて判断します。多発性骨髄腫では、治療によって病状が安定しても、再発・再燃に注意が必要です。

再発・再燃したときの治療法

再発・再燃後の治療法は、前の治療終了時から再発・再燃までの期間によって異なります。12ヵ月以上経ってから再発・再燃した場合には、移植も含めて、効果のあった最初の治療を行うこともあります。
比較的早い段階で再発・再燃し、M蛋白の増加、貧血や骨病変の進行がみられるときには、プロテアソーム阻害剤、アルキル化剤、免疫調節薬、抗体薬、アントラサイクリン系抗腫瘍薬、ステロイドなどを併用し、これまで使っていないおくすりの組み合わせによる薬物療法を行います。再発・再燃治療でも、骨髄腫による合併症に対する治療を行うことが重要です。
再発・再燃しても治療をすれば、多くの患者さんは、骨髄腫細胞やM蛋白が減少し病状が安定します。

【次の治療を始めるときに―再発の判断基準について―】

多発性骨髄腫の国際的なガイドライン(2014年版IMWG)による再発の基準には以下の段階があります(表13)。

M蛋白再発(Paraprotein relapse) CRAB症状はないけれども、M蛋白の値が一定以上上昇している状態です。
生化学的再発(Biochemical relapse)と呼ばれる場合もあります。 臨床的再発(Clinical relapse) CRAB症状の再発がある状態です。

表13 再発治療の国際的な開始基準

表13 再発治療の国際的な開始基準 画像を拡大する

一般的には、症状がなくてもM蛋白の上昇を放置すれば、CRAB症状などの再発につながります。また、M蛋白の上昇の仕方やCRAB症状の出現時期は、患者さんによってさまざまです(図5)。
どの時点で再発治療を開始するかは、患者さんの年齢、体力、持病の有無、臓器障害、検査数値の上昇の仕方などから総合的に判断します。CRAB症状が出る前に再発治療を開始したほうが治療の効果は大きく、患者さんの生活の質(QOL)を落とさずに、次の再発までの期間を遅らせられることができるという報告もあります。そのため、最近では、臨床的再発になる前、つまり、M蛋白再発の段階で再発治療を開始することが多くなっています。
ただし、患者さんの病状や治療状況によっても異なりますので、ご自身の状況については主治医とご相談ください。

図5 人によって異なる再発までの経過

図5 人によって異なる再発までの経過 画像を拡大する