2.タイプと病期
(ステージ)について

多発性⾻髄腫の診断では、⾎液や尿の中にあるM蛋⽩と⾻髄腫細胞の量、症状が出ているかどうかによって、いくつかのタイプに分けられます。また、進⾏度を表す病期は、早期のⅠ期から進⾏したⅢ期まで3段階に分けられます。タイプと病期を調べることは、病気の経過予測、および治療⽅針を決めるために重要です。

多発性骨髄腫のタイプ

多発性⾻髄腫は、M蛋⽩や⾻髄中の形質細胞の量、臓器障害の有無によって、いくつかのタイプに分けられます(表2)。
無症候性⾻髄腫は、⾎液や尿の中にM蛋⽩が⼀定レベル以上みられますが、症状や臓器障害はない状態です。意義不明のM蛋白血症(MGUS)は、異常な形質細胞によって産出するM蛋⽩が少ないレベルでとどまる病気で無症状です。⼀般的に、無症状なら治療の対象になりませんが、⾎液検査などで、進⾏するリスクが⾼い⾻髄腫診断バイオマーカー(表3)がある場合には、治療を開始することがあります。
CRAB※1症状と呼ばれる臓器障害である高カルシウム血症、腎障害、貧血、骨病変(骨の痛み、骨折など)のどれか1つでも出ている場合には、症候性骨髄腫と診断されます。多発性骨髄腫の患者さんのほとんどはこのタイプであり、治療が必要です。
一方、M蛋白はみられないものの骨髄腫の症状がみられる場合は非分泌型骨髄腫と診断されます。治療は、症候性骨髄腫と同じように行います。
※1 CRABは、骨髄腫の代表的な症状である高カルシウム血症(hypercalcemia)のC、腎機能障害(renal insufficiency)のR、貧血(anemia)のA、骨病変(bone lesion)のBをつなげた造語。

表2 多発性骨髄腫とそのほかの骨髄腫

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表3 進行するリスクが高い骨髄腫診断
バイオマーカー

表3 進行するリスクが高い骨髄腫診断バイオマーカー 画像を拡大する

多発性骨髄腫の病期

多発性骨髄腫の病期は、病気の進行度や今後の見通しを表し、血液中のアルブミンとβ₂ミクログロブリンの数値によってⅠ〜Ⅲ期まで3段階に分類されます。Ⅲ期が最も病気が進⾏した状態です(図2)。治療法を選ぶため、また今後の⾒通しを知っておくためにも、⾃分の病気のタイプや病期を知っておきましょう。

図2 多発性骨髄腫の国際病期分類(ISS)

図2 多発性骨髄腫の国際病期分類(ISS) 画像を拡大する

【骨髄腫の治療選択に関わる染色体異常とは】

多発性骨髄腫は、何らかの理由で起こった遺伝子や染色体の異常によって発症します。ヒトの細胞の核の中には23対46本の染色体があり、1~22番の常染色体と1対の性染色体で構成されています。多発性骨髄腫の患者さんにどのような染色体異常があるかは、骨髄検査で採取した骨髄液や組織を用いて調べます。

骨髄検査

骨髄液や骨髄組織を採取し、その中に含まれる骨髄腫細胞の数や形状、染色体異常などを調べる検査です。局所麻酔をして、腸骨(腰にある骨)に細い針を刺し、骨髄液を注射器で吸引する「骨髄穿刺」と、腸骨にやや太い針を刺して骨髄組織を採取する「骨髄生検」があります。染色体の異常の種類は、採取した骨髄細胞を分裂させて出てきた染色体を固定して調べます。

骨髄穿刺と骨髄生検

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染色体とは染色体は遺伝情報の発現と伝達を担う生体物質で、人間のすべての細胞には23対46本の染色体が入っています。1本の染色体には、生命の設計図である遺伝子が数百から数千含まれています。骨髄腫の場合、多くの患者さんに、染色体がちぎれて欠如する欠失、ちぎれて他の染色体にくっつく転座などの染色体異常が検出されます。

染色体イメージ図

染色体イメージ図

高リスクの染色体異常

多発性骨髄腫では、少なくとも、17番染色体の欠失、4番と14番の染色体が入れ替わる転座、14番と16番の染色体が入れ替わる転座のどれかがあると病気が進行しやすいことがわかっています(表4)。これらの染色体異常は重複して起こることもあります。高リスクの染色体異常があるときには、より強い治療や治療期間の延長、治療薬などの選択を検討する場合があります。

表4 多発性骨髄腫の染色体異常のリスク分類

多発性骨髄腫の染色体異常のリスク分類 画像を拡大する

【参考】改訂国j病期分類(R-ISS)

臨床試験などの際には、国際病期分類(ISS)の病期とLDH(乳酸脱水素酵素)の値、高リスクの染色体異常の有無によって病期が変わる改訂国際病期分類が用いられることがあります(表5)。

表5 改訂版国際病期分類(R-ISS)

改訂版国際病期分類(R-ISS) 画像を拡大する