大腸がんQ&A
大腸がんの基本
大腸がんの進行度は?
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大腸がんは、ステージ(病期)0からⅣまであり、0から順に進行したがんになります。病期はがんの大きさではなく、大腸の壁にどのくらいがん細胞が深く入り込んでいるか(深達度)、周囲の組織への広がり(浸潤)の程度、およびリンパ節や肝臓、肺など他の臓器への転移があるかどうかで決まります。
大腸癌研究会編:患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2022年版, 14, 金原出版, 2022. より改変
ステージ別で治療が違う?
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大腸がんの治療は進行度に応じて違います。科学的根拠に基づいた、その時の最良の治療法を「標準治療」といい、大腸がんの標準治療は次のようなものです。
ステージは病期のことで、0~Ⅳまであります。大腸癌研究会編:患者さんのための大腸癌治療ガイドライン2022年版, 40-44, 金原出版, 2022. より改変
ステージ0
がんが粘膜内にとどまっているときは、内視鏡で取り除きます。一度で取り切れないときは手術をします。
ステージⅠ
がんが粘膜に達していても比較的浅い「軽度浸潤」の場合は、内視鏡で切除します。
がんが粘膜下層の深くまで達している「深部浸潤」の場合は手術が選択されます。大きさにより、決められた範囲の腸管と転移の可能性のあるリンパ節を切除します。
手術には、お腹にメスを入れて切る開腹手術と、腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術とは、お腹に内視鏡を挿入し、テレビカメラでお腹の中を見ながらがんを切除するものです。ステージⅡ・ステージⅢ
手術(開腹手術または腹腔鏡手術)により、適切な範囲で腸管と転移の可能性のあるリンパ節を取り除きます。切除したリンパ節に転移したがんが見つかった場合は、再発を予防するために、薬物療法か放射線療法を行います。
ステージⅣ
切除が可能な場合は、原発がん(最初にできたがん)、転移したがんを切除します。手術は何度かに分けて行うこともあります。大腸がんは切除することにより根治が望めるがんだからです。
転移した場所や個数、患者さんの全身状態によって、手術ができない場合は、薬物療法や放射線療法 、つらい症状を和らげるための緩和治療が行われます。
大腸がんはどこにできるのか?
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大腸とは、盲腸から、結腸(上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸)、直腸(上部、下部)、肛門までの長さ約2mの臓器です。大腸がんは粘膜の表面から発生した後、次第に大腸の壁に深く侵入して、進行するにつれ、リンパ節や肝臓、肺など別の臓器に転移します。大腸がんの発生頻度を部位別に調べると、直腸、S状結腸、上行結腸、横行結腸、盲腸、下行結腸の順に多くなっています1)。
国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 消化管内科, 朴 成和: 国がん中央病院 がん攻略シリーズ 最先端治療 大腸がん,13, 法研, 2018. より作図
大腸がんの症状と部位のかかわり
大腸がんの症状には、お腹が張る、腹痛、しこり、便秘と下痢を繰り返す、血便などがありますが、できた部位によっては、必ずしもこうした症状が出ないこともあります。
上行結腸のがんは、便がまだ軟らかい部位であることから、便の通過がさえぎられることが少ないため、腹痛や血便は少ないといわれます。逆にS状結腸や直腸は、肛門に近いため、下血や血便に気づきやすいと言われます1)。大腸がん右側と左側の違い
大腸がんは大腸の右側にできるか(右側がん)、左側にできるか(左側がん)によって、症状が変わります。右側では出血による鉄欠乏性貧血が多く、左側では血便や排便困難が多いといわれています2)。
また、最近では、右側と左側では抗がん剤の効き方に違いがあり、その結果、予後が異なるという報告が発表され、大きな注目を浴びています。これらの違いには右側と左側の発生学的な違いや遺伝子変異、発現割合などの違いが関与することが示唆されています。参考文献:1)国立研究開発法人 国立がん研究センター中央病院 消化管内科, 朴 成和:国がん中央病院 がん攻略シリーズ 最先端治療 大腸がん,12-19, 法研, 2018.
2)Petreli F, et al.: JAMA Oncol. 2017, 3(2): 211-219 .
大腸がん治療のガイドライン
ガイドラインとは、病気の予防・診断・治療・予後予測など診療の根拠や手順についての最新の情報を専門家の手でわかりやすくまとめた指針のことです。国内の「大腸癌治療ガイドライン」には、標準的な治療方針とその根拠が示されています。日本と海外とでは、大腸がんの診療の質、診療に対する考え方に違いがあるため、海外のデータを十分に吟味する一方で、大腸癌研究会等で集積された日本独自の臨床データも重視して、本ガイドラインは作成されています。アメリカには「NCCN(全米総合がん情報ネットワーク)ガイドライン」があります。NCCNガイドラインでは、大腸がんができた場所(左側か右側か)で治療方針が異なります。日本の大腸癌研究会の先生も参加するアジア版ESMOでも、大腸がんが左側・右側どちらにあるかで、治療方針は異なります。
再発・転移のリスクが高い部位とは?
食事で気をつけることは?
- 食事については気をつけなければいけないことはありません。アルコールも楽しむ程度であれば、とって頂いてかまいません。自由に楽しい生活を過ごすことを心がけるようにしましょう。不安なことがあれば、担当の医師に聞いてみましょう。
個別化医療とは?
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2003年、人体の設計図であるヒトゲノムの解読が終わったことにより、医療は大きく変わり始めました。その人の遺伝子を調べることにより、遺伝病や将来かかりやすい病気を予測したり、今かかっている病気の診断をして、その人に合った薬を選んだりすることが可能になったのです。このうち、病気の治療にゲノム医療を活用し、その人に合う薬を使うことを「個別化医療」といいます。
がんとは、正常な細胞の遺伝子が突然変異した異常細胞のことで、だれのからだでも生まれているものです。一つの細胞で、それが何度も起こることにより、がん細胞が生まれます。
がんの「個別化医療」では、患者さんから採取したがん細胞の遺伝子検査を行うことにより、そのがんの進行度や悪質度を判断し、効果のある薬を見つけることが可能になったのです。この時使う抗がん剤は、「分子標的薬」といって、異常な細胞だけをピンポイントでたたく薬です。その人に合う薬なので、従来の抗がん剤と比べ副作用が大幅に軽減され、効果も高まります。
大腸がんでは、EGFRという遺伝子の異常をターゲットにしたEGFRタンパク質の阻害薬があります。最近では、免疫チェックポイント阻害薬という新しいタイプの分子標的薬が研究されています。参考文献:
櫻井晃洋:そうなんだ!遺伝子検査と病気の疑問, 77-84, メディカルトリビューン, 2013.
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「切除不能」大腸がんとは
大腸がんの再発と転移 「切除不能」大腸がんとは -
薬物療法を受ける前に
薬物療法を受ける前に -
治療について
薬物療法のメリットとデメリット 「切除不能進行・再発大腸がん」の治療について 治療中の検査 -
個別化医療
RAS遺伝子検査による大腸がんの個別化医療 大腸がんQ&A
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