5.症状(合併症)を改善する治療について

骨病変には、骨髄腫細胞を減らすための薬物療法と並行して、症状を改善する治療を行うことが大切です。
高カルシウム血症、貧血、腎不全、感染症、神経障害などの症状に対しても、それぞれ症状を軽減したり 改善したりする治療が行われます。

骨病変

大部分の多発性骨髄腫では、骨がもろくなったり痛みが出たりする骨病変がみられます。その場合、⾻吸収抑制薬の投与によって骨の破壊を抑えます。腎障害のある⼈には違う種類の⾻吸収抑制薬を投与します。これらのおくすりは、あごの骨が炎症を起こしたり壊死したりする顎骨壊死を起こすことがあるので、事前に歯科医のチェックを受け、口腔ケアを行うことが大切です。また、低カルシウム血症を起こさないようにビタミンD製剤やカルシウム製剤を併用します。
骨折しているときや骨の補強が必要なときには、患部の骨を補強する手術をする場合もあります。脊椎の圧迫骨折がある人は、コルセットを着用すると、圧迫骨折の進行や痛みが軽減されます。骨の痛みの治療には患部への放射線照射も有効です(表4)。

高カルシウム血症と腎不全

高カルシウム血症に対しては、生理食塩水を点滴して脱水症状を改善させるほか、尿へカルシウムを排出させ心臓の負担を減らすために利尿薬を投与します。また骨病変と同様に骨吸収抑制薬を使います。
腎不全は多発性骨髄腫の治療で改善することが多いので、できるだけ早く標準的な治療を開始します。腎機能を回復させるためには、水分を多めに摂取します。腎機能がかなり低下しているときには、一時的に人工透析を行うことがあります。

表4 緊急性の高い合併症への対応

表4 緊急性の高い合併症への対応 画像を拡大する

貧血と感染症

貧血がひどいときは赤血球の輸血を行います。腎機能の低下による貧血には、赤血球を増やすおくすりを注射することもあります。
感染症の対策として、肺炎球菌やインフルエンザの流行時期にはワクチンの接種が推奨されます。造血幹細胞移植を受ける時など、帯状疱疹を発症しやすい時には抗ヘルペスウイルス薬を投与します。

神経障害と過粘稠度症候群

脊髄圧迫による知覚障害や運動麻痺が起こったら、できるだけ早く放射線照射とステロイド薬治療、場合によっては手術を行うことが大切です。
過粘稠度症候群は、M蛋白の増加によって血液がドロドロになった状態で、めまい、頭痛、目が見えにくくなるといった自覚症状が出ます。M蛋白の急速な除去が必要なときには、M蛋白を含む血漿を除去し、健康な人の凍結血漿を入れる血漿交換を行います。